ジェロボアムは、2003年1月18日に、店主である僕と家内とで始めた18坪ほどの小さなワインショップです。
店を始めるにあたり、こんな店にしたい・・と考えて綴った文章がありました。
ジェロボアムはワインを中心に扱う酒屋です。
世界中から届く美味しいワインを揃えます。
ワインを飲むことが好きな人たちが
たくさん集まる店になるでしょう。
この店に来てくれる人たちのことを考えながら
こんな店にしたいといつも思っています。
初めて来て頂いた時からどこか懐かしいと感じて頂ける店。
ここで静かに並ぶワインからのメッセージが
訪れた人に自然に伝わっていくような温かさをもった店。
ここでワインを選んだ日の記憶が
いつの日かたくさんの甘い記憶のひとつとして
お客様に思い出して頂ける店。
たかがワイン、
それでもワインのある人生は幸せです。
その幸せを、知ってほしい
それがジェロボアムの願いです。
気がつけば20年、ジェロボアムはそんな店になっているでしょうか。
開業前に書き残したメモに、「品揃えは充実させたいし売り方でも個性を打ち出す必要がある、でも本当に大事なところはそこじゃない」とありました。ネット・ビジネスが急速に広まることもわかっていましたがそこに価値を感じていなくて、「品揃えはその気になれば誰でも真似できる、安売りも同じ、スペアがいくらでもある店に良いお客様はつかない」とも。その考えは今も同じ、変わっていません。
長い月日が流れるあいだに、多くの人たちとの出会いの中で積み重なったものがあります。
僕の心の中だけにあることもあれば、誰かときっと共有できていると思えることも。ワイン売りなので、”ワインとお金の交換”から始まったお付き合いがほとんど、それだけで終わることも少なくないですが、振り返ってみると、それは長く続くと強い信頼関係を築くことになっていて、その交換以上の意味をもってきているような気がします。そして、それはこれからの僕にとって、さらにかけがえのないものになるように感じられています。
正直なところ、ジェロボアムをあと何年続けていけるのかわかりません。安くない家賃を支払い街中で続けている店ですし、時代の変化もあります。でも、未だはっきりと口にできるまでに至っていない『本当に大事なこと』を探す旅はもう少し続きそうです。
それを備えた店だと胸を張って言える日がくるのか、僕にはわかりませんが。
2024年、今年もジェロボアムをよろしくお願いします。
ジェロボアム 店主 安藤博文